Press release | 10 5月, 2016

IUCNとトヨタ自動車、世界の絶滅のおそれのある生物の評価で協働

• トヨタは、「トヨタ環境チャレンジ2050」の実現に向けた重要なプロジェクトとして、IUCNとのパートナーシップにより、生物多様性の危機に関する知見を拡充。トヨタは、IUCNの活動を5年間支援する予定であり、2016年は約120万ドルの助成を実施。
• IUCNは、アセスメント(評価)を実施済みの絶滅のおそれのある生物種を、現在の8万種から2020年までに2倍の16万種に増やし、地球上の生物多様性の保全状況をより包括的に把握するという目標に向けて大きく前進。トヨタの支援により、今後アセスメントが必要な8万種の生物種うち、35%に相当する2万8千種以上のアセスメントが可能に。
 

IUCN(International Union for Conservation of Nature、国際自然保護連合)とトヨタ自動車(株) (以下、トヨタ)は、本日、5年間のパートナーシップを通じて、「IUCN絶滅のおそれのある生物種のレッドリスト」* (以下、IUCNレッドリスト)の強化に取り組むことを発表した。今後、トヨタの支援により、2万8千種以上の生物種を対象に絶滅危険性のアセスメントを実施するが、この中には、世界人口のかなりの部分が依存している主要な食糧源が含まれており、生物多様性の損失を
食い止めるためのデータや食糧安全保障に関する知見を大幅に拡充する。

現在、地球では生物種の絶滅が歴史上もっとも速いスピードで進んでおり、人類の生存に不可欠な生物種の現状を理解する必要性は、かつてないほど高まっている。

IUCNレッドリストの強化は、今後の地球規模での生物多様性保全の指針となるものであり、世界の何億もの人々の生活にプラスの影響をもたらす取り組みである。トヨタにとって、IUCNレッド
リストへの支援は、クルマの負荷を限りなくゼロに近づけるとともに社会にプラスをもたらすことを目指す「トヨタ環境チャレンジ2050」の実現に向けた重要なプロジェクトである。トヨタはこの
プロジェクトを5年間支援する予定であり、2016年は、約120万ドルの助成を実施する。

「『トヨタ環境チャレンジ2050』は、気候変動問題だけでなく、生物多様性についても取り組んでいます。気候変動と生物多様性は密接に関わっており、コインの表裏の関係のように決して切り離せないものなのです。」と、インガー・アンダーセンIUCN事務局長は語る。「トヨタからの大きな支援により、レッドリストに携わる研究者達は、2020年までに16万種のアセスメントを実施するという目標の達成に向けて大きく飛躍することができます。また、2015年に国連加盟国によって
採択された持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)のうち、『目標2:飢餓をゼロに』の実現を支援するIUCNの取り組みにも、大きく貢献するものだと思います。」

「地球環境問題の取り組みにおいて大切なことは、人々の生活に良い変化をもたらすように早期かつ大胆に具体的な行動を起こすことです。」と、トヨタのディディエ・ルロワ副社長は語る。 「トヨタは、1997年にプリウスを発売し、最近では燃料電池自動車MIRAIを発売するなど環境対応を進めてきました。しかし、環境を守るということは、二酸化炭素や排出ガスの問題に対応することだけではありません。生物多様性の保全も、人々の生活にとって重要な取り組みです。IUCNとのパートナーシップにより『人と自然が共生する未来づくりへのチャレンジ』の実現に向けて新たな一歩を踏み出せたことを誇りに思います。」

「IUCNレッドリスト-生命のバロメーター」

IUCNレッドリストは、過去・現在の、あるいは今後予測される兆候をふまえ、生物種絶滅のリスクを評価している。現在までに約8万種のアセスメントを実施し、2万3千種以上が絶滅の危機に
直面していることが明らかになっている。

IUCN生物多様性保全グループのグローバルダイレクターであるジェーン・スマート博士は、「アセスメント済みの生物種を、現在の8万種から2倍に増やし16万種のアセスメントを達成することで、IUCNレッドリストは、世界の生物多様性の状態をより包括的に示す『生命のバロメーター』として、より完全なものになります。」と語る。「トヨタの助成は、政策の決定に資するというIUCNレッドリストの極めて重要な価値をさらに高めるものです。具体的には、生物多様性の損失を食い止めるために推移を分析し、科学的研究に必要なデータを提供し、生物種に関する認知度の向上に寄与するということです。」

今後5年間の新たなアセスメント-食糧源としても重要な生物種を対象に

IUCNは、今後5年間にわたりトヨタと協働することで、今後アセスメントが必要な約8万種の  うち、35%に相当する2万8千種以上のアセスメントを実施する予定である。

IUCNの専門家は、トヨタの助成による新たなアセスメントの主な対象に、植物・魚類を選定した。これらは、数十億の人々の食糧源としても重要な生物種である。
アセスメントの対象には、米や麦などの穀物と関係が近い野生種も含まれている。これらは、  世界中で生産されている主要穀物の生産性や病害虫への抵抗力を高めるために必要な遺伝子を もつ生物種であり、食糧安全保障の観点からも重要なものである。
また、海水魚(例えばイワシ・ニシン類、ヒラメ、カレイ等)も対象に含まれている。これらは、世界中の人々の食糧源であるだけでなく、約2億人に漁業・水産加工業といった仕事を与えており、産業の観点からも重要な生物種である。
その他にも、経済的な観点から重要な植物、きのこ類、淡水魚、爬虫類、無脊椎動物(例えば、淡水系の生態系を把握する上で重要となるトンボ)のアセスメントを実施する。

また、年間350万人以上が使用しているIUCNレッドリストのデータベースを提供するウェブ  サイトを強化するなど生物多様性に関する認知向上活動も実施する予定である。

トヨタ環境チャレンジ2050

 トヨタは、サステイナビリティにとって生物多様性が重要であることを認識しており、世界各地で自然保全活動に取り組んできた。2015年10月にトヨタが発表した「トヨタ環境チャレンジ2050」は、地球環境の問題に対し、クルマの持つマイナス要因を限りなくゼロに近づけるとともに社会にプラスをもたらすことを目指しており、チャレンジ項目の一つに、「人と自然が共生する未来づくりへのチャレンジ」を掲げている。トヨタは、長年継続してきた環境活動助成をグローバルに強化し、今後も、世界で自然保全活動を実施している団体と協働でプロジェクトを立ち上げていく予定である。

*IUCNが作成している絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト。絶滅のおそれのある種を守る法律や対策をつくる ために活用されている。種の絶滅の危険性を、その個体数や生息地の広さ、それらの減少のスピードなどの情報から 評価し、①「絶滅」、②「野生絶滅」、③「深刻な危機」、④「危機」、⑤「危急」、⑥「準絶滅危惧」、⑦「低懸念」、⑧「データ不足」、
⑨「未評価」の9つのカテゴリーに分類している。現在までにアセスメントを実施した約8万種の生物種(「未評価」を
除く8つのカテゴリーに該当)のうち、2万3千種以上が「絶滅危惧」(カテゴリー③「深刻な危機」、④「危機」、⑤「危急」)に該当する。

以 上
(お問い合わせ先)

・IUCN メディア&コミュニケーションマネージャー アリステル・バーネット
+41 22 999 0345、携帯:+41 79 452 2872

・IUCN日本リエゾンオフィス コーディネーター 古田尚也
03-5944-5482(大正大学地域構想研究所内)、Eメール:naoya.furuta@iucn.org

・トヨタ自動車株式会社 広報部
東京本社:03-3817-9111~7 、名古屋:052-552-0603~9